レーザ光安全の基本概念


 ある強さ以上のレーザが人体に当たると、目と皮膚に障害が出ます。レーザはもはや実験室や生産現場のみで使用されるものではなく、家庭の中にまで入り込んでいます。たとえば、CDプレイアーは各家庭に1台以上が入っているだろうし、パソコンに組み込まれるCDレコーダブルやDVDレコーダブルには目に照射されれば失明の危険性があるレーザが使用されています。近い将来のブロードバンドネットワークでは光ファイバーによって、部屋の中にレーザ光が持ち込まれます。また講演等の際の指示器であるレーザポインターは目に向けて照射すれば障害が出てもおかしくない強さのレーザが使われています。しかも、レーザポインターは子供がおもちゃにしているといいます。

 このようなレーザの普及に対して、IECで安全性国際規格(IEC68025、詳細は本ページ末尾)が作られ、これをベースにして、日本においても日本工業規格 JISC6802(最新版は1997年制定。1998年に追補あり。日本規格協会から購入可。)が制定されました。最新版のJISにおいてはLEDも規格内に取り込まれ、対象が広がってきています。

 元々このIEC、JISはレーザ加工機やレーザライトショーの主催者に向けて、レーザの管理をいかに行うべきかを定めたものでですが、最近はおもちゃ屋で売られているレーザポインターによって子供の目の事故が報告され、野球場においてピッチャーに向けて照射されるなどの事態が発生し、2001年1月には経済産業省がレーザポインターを消費者保護の目的で、消費生活用製品安全法施行令の規制対象に加えています。

 JISそのものは安全の基準であり、法的強制力を伴うものではありませんが、レーザポインター(および、その他の携帯用レーザ応用装置)は、法規制の対象となった訳です。

 従来、レーザポインターはJISで定めている出力規格のクラス2(1mW以下)とすることが業界の常識でした。これは通常の使用法のもとでは目に対して安全であるという出力規模です。しかし、ポインターの視認性のみを追求して5mW近い製品が販売されるなど、安全性を無視する行動が法規制を招いてしまったことは残念です。

 JISC6802は難解と言われますが、以下は当社コンサルタントが「レーザ安全ガイドブック」(1989年、改訂版1992年、新技術コミュニケーションズ)に執筆したJISC6802の基本概念です。(一部修正)

JISC6802
レーザのクラス分け


参考 IEC60825の構成

文書番号 内  容 発行年 備  考
IEC60825-1 Part 1: クラス分け、要求事項、ユーザへの指針 1997-7
IEC60825-2 Part 2: 光ファイバ通信システムの安全 2000-5
IEC60825-3 Part 3: レーザショーへのガイダンス 1995-12
IEC60825-4 Part 4: レーザの保護 1997-11
IEC60825-5 Part 5: 製造業者のチェックリスト 1998-11 規格ではない
IEC60825-6 Part 6: 光源を有する製品の安全 1999-7
IEC60825-7 Part 7: 赤外線放射機器の安全 2000-6
IEC60825-8 Part 8: 医用レーザの安全ガイドライン 1999-11
IEC60825-9 Part 9: 非コヒーレント光源の最大許容露光量 1999-10